大学医学部女性差別の根本的な原因

東京医科大学の女子受験生差別が問題になっています。
元々は文科省官僚息子の裏口入学から始まった話題でしたが、女子受験生と多浪の男子受験生が不利になるよう得点操作がなされていたことも発覚しました。
東京医科大学のみならず他の大学でも似たような事が行われているのではないかと波紋が広がっています。
個人的にも時代的にこれはもう通らないし変えていくべきだと思いますが、単に女性差別の問題として捉えると事の本質を見誤ってしまうかもしれません。
今回はこの大学医学部の女性差別について、根本的な原因を探っていきます。

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問題の整理

まず問題を整理します。
上述の通り元々は助成金事業で優遇する見返りに、文科官僚の息子の入試の点数に加点し、裏口入学させたという報道が始まりです。
それが表に出て、女子生徒及び多浪の男子生徒にも不利になるよう点数が操作されていましたこともわかり、より騒動が大きくなりました。
その具体的な方法は、マークシート方式の1次試験の段階では女子の減点はなく、二次の小論文の得点が出た段階で全員の小論文に一度「0.8」の係数を掛けて減点。
その上で、現役及び1,2浪の男子に20点、3浪男子には10点を加えていたということです。
つまり、女子と4浪の男子は現役~2浪の男子と比べて20点分不利になっていたことになります。

原因

では何故そのような得点操作をしたのか。
これは要するに女性の医師は結婚や妊娠をすると離職、退職することが多く、女性の医師が増えると
病院が回らなくなる恐れがあるということです。
医療コンサルタント業のエムステージが行ったアンケートでは医師の65%が「理解できる」と答えており、女性医師ですらある程度仕方ないと答える人もいます。

『東京医科大学の女子一律減点、医師の65%が「理解できる」』

従って女性に意地悪したいわけではなく、組織を維持するための必要悪として行っていたということのようです。

根本原因

上に書いたことが直接的な原因ということになりますが、これには少し違和感もあります。
本来大学は教育の場に過ぎず、学生が社会に出てから業界がどうなるかなんてことを大学側気にする必要はありません。
医師の割合を調整するにしても国家試験で行えばいいことです。
実際医学部の女性差別は公然の秘密として扱われていましたが、医学部以外ではあまりそういった話は聞きません。
ここに医学部の特殊性があって、基本的に医学部を持つ大学は皆附属の大学病院を持っています。
そしてその大学の卒業生がそのままその付属病院で働き始めることが多くなっています。
このような背景があるために日本の医療というよりは、自らの病院のために入試で調整を行っているのでしょう。

「結婚、妊娠でも退職しなくて済む環境を作るべき」、「女性医師が退職しても回っていく体制を作るべき」という批判は間違ってはいないと思いますが、そもそも何故そういう仕組みになっていないのでしょう。

「女性の医師は結婚や妊娠をすると離職、退職することが多いため数を抑制する必要がある」、実を言うとこの説明を読んだ時僕は強い既視感を覚えました。
これって大企業が女性の採用を抑制する理由とそっくり同じなんですよね。

前々から医学部受験で女子が不利というのは言われていたみたいですが、一般企業が女性の採用や出世に消極的というのはそれ以上によく知られていて、それが原因でジェンダーギャップ指数ランキングで日本の順位が低い原因となっています。

また、過去の記事(女性の就職・昇進が難しい理由)でも書きましたが終身雇用的な大企業ほどそうした傾向が強くなっています。

(中小企業庁 「働き方とワーク・ライフ・バランス」)

↑中小企業の方が大企業より女性の正社員率が高い

(参考:なぜだ? 中小経営者が、女性を管理職にしたがる「腹の内」)

なぜこういうことが起こるかと言えば、終身雇用的な日本型雇用の元では社員が一つの会社で30~40年働き続ける前提でシステムが作られているため、結婚や出産で退職したりブランクが出来がちな女性は敬遠されがちです。
産休や育休など女性の働きやすい環境を整備すべきという意見は間違っていないですが、こうした企業ではそれがコストとなりますし、必要があれば無理のきく男性社員を優先することが多くなります。
そのため、終身雇用にする余裕のない中小企業の方が女性の採用や管理職が多く、子供を会社に連れてきていい等柔軟な制度を持っている企業も珍しくありません。

病院も規模が大きいほど終身雇用的傾向が見られる

そして実際、フリーランスの麻酔科医筒井冨美さんによると、大学病院は終身雇用・年功序列を元にしたメンバーシップ型の雇用形態になっているとのことです。

参考:「医師の集団辞職が大学病院で多発する理由」

また、少し古いですが下の資料でも大きな病院ほど年功給の割合が高く、準公務員的な待遇も多くなっていることが確認できます。


全日本病院協会「医療従事者の給与に関する調査」

つまり、多くの大学病院では硬直的な終身雇用制度を維持しているがためにブランクが出来がちな女性は好まれないということです。
推測ですが、小規模なクリニック等の方がそれほど女性が差別されることなく能力を発揮しやすい環境になっているんじゃないかと思います。

そう考えると、女子だけでなく多浪男子も差別されていた理由について大学側は多浪生の留年の多さや国家試験合格率の低さを挙げていましたが、入学時点で既に数年ブランクを抱えている多浪生は終身雇用的な大学病院にとってはマイナスだから、という理由もあるのかもしれません。

まとめ

  • 医学部入試で女性が差別されるのは結婚、出産での退職やブランクが起こるから
  • 医学部を抱える大学は附属の大学病院も持っているため、学生が病院で働く時のことも考える
  • 大学病院は硬直的な終身雇用の傾向が強いため、女学生を敬遠しがち

結論としては、この問題を解消するには単に女性差別という文脈だけではなく、大学病院の終身雇用・年功序列に基づいたメンバーシップ型の制度に原因があると理解し、変えていく必要があります。
例えば平均10年程で医者が退職していく入れ替わりの多い病院であれば、結婚や出産で女性が退職してもそこまで困らない、つまり入試で女性差別をする理由はなくなるわけです。
これだけ批判が集まっている以上大学側も何かしらの対応はするでしょうが、問題の本質をきちんと見つめないと大きく改革するのは難しいでしょう。

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