ワールドカップの裏でFIFAランキングの算出方法が変更 日本代表への影響は?

ワールドカップロシア大会が開幕から一月経ち、とうとう閉幕しました。
これから各チームは再び四年後のカタール大会を目指すわけですが、ワールドカップが開幕する直前にFIFAランキングについて重大な変更が発表されました。

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以前こちらの記事(FIFAランキングが完全に実力通りではない理由)で、FIFAランキングの問題点をいくつか指摘しましたが、概ねそれらの問題をなくすか緩和する内容になっています。

新しい算出方式は今ワールドカップ終了後から早速適用されます。
そこで新しいFIFAランキングの算出方式がどんなものか、そこ日本代表にどう影響するかまとめてみます。

まずは2018年からの新方式と、これまでの旧方式それぞれの算出方法を並べます。

新方式

対象となる試合
全ての国際Aマッチ

試合前のポイント (A)

試合の重要度 (B)
0.5:国際Aマッチデー以外の親善試合(E-1選手権なども含まれる)
1:国際Aマッチデーの親善試合
1.5:各ネーションズリーグ(例:UEFAネーションズリーグ)のグループステージ
2.5:各ネーションズリーグ(例:UEFAネーションズリーグ)のファイナルフォー(最終リーグ)とプレーオフ
2.5:各大陸選手権予選とFIFAワールドカップ各大陸予選
3.5:各大陸選手権本大会の準々決勝までの全試合
4.0:各大陸選手権本大会準決勝以降の試合(準決勝、3位決定戦、決勝)
5.0:FIFAワールドカップ本大会準々決勝までの全試合
6.0:FIFAワールドカップ本大会準決勝以降の試合(準決勝、3位決定戦、決勝)

試合の結果(C)
勝ち:1点、引き分け:0.5点、負け:0点

試合の期待結果(D)
D=1 / (10(-E/600) + 1)
E=(相手の試合前のポイント)-(自分の試合前のポイント)

ランキングポイント(P)
上記までに算出された値を元に、以下の式でランキングポイントを求める。
P= A+B ×(C-D)

旧方式

対象となる試合
過去48ヶ月間の国際Aマッチが対象となる。

勝ち点 (A)
あらゆる国際Aマッチにおいて、勝ち:3点、引き分け:1点、負け:0点とする。ただし、PK戦において勝敗が決した試合に関しては勝ち:2点、負け:1点とする。

試合の重要度 (B)
国際Aマッチには4段階の重要度が設定されている。
1.0:親善試合(東アジアサッカー選手権などの小地域選手権もこれに含まれる)
2.5:大陸選手権の予選、FIFAワールドカップ各大陸予選
3.0:大陸選手権の本大会、FIFAコンフェデレーションズカップ
4.0:FIFAワールドカップ本大会

対戦国間の強さ (C)
対戦国の強さはその時点で最新のFIFAランキングが適用される。
1位は 2.00
2位以下は (200 – (相手国のFIFAランク)) / 100 の値
150位以下は 0.50

大陸連盟間の強さ (D)
2014 FIFAワールドカップ以後
UEFA: 0.99 CONMEBOL: 1.0 CONCACAF: 0.85 AFC: 0.85 CAF: 0.85 OFC: 0.85
この定数を元に、(対戦2国の定数の合計) / 2 を大陸連盟間の強さの関係を表す係数とする。

各国際Aマッチにおけるポイント
上記までに算出された値を元に、以下の式である国際Aマッチにおけるポイントを求める。
(A) × (B) × (C) × (D) × 100
ランキングポイントの算出
48ヶ月を12ヶ月ずつ4つに区切る。
直近の12ヶ月ごとに、上記の国際Aマッチで獲得したポイントの合計を計算し、行った試合数で平均をとる。ただし、5試合以下だった場合は一律割る数は5とする。
直近の12ヶ月ごと獲得したポイントの割合は100%、50%、30%、20%とする。得られた4つの平均値にこの割合を掛け、合算する。この数値がランキングポイントとなる。

となっています。
これだけ見てもぱっと見ではわかりにくいと思うので、新方式の概要と個々の変更点を見ていきます。

新方式の概要

ワールドカップロシア大会後から適用される新方式は、イロレーティングという算出方法を流用しています。
元々はチェスで使われていた方式ですが、現在はスポーツの分野でも広く使われています。
現行のFIFAランキングは欧州南米以外の大陸連盟加盟国に不利であるとか、ルールの穴を突いて実際より高く出来るなど問題点があり批判されていました。
それらの問題点をなくすために今回新たに導入されました。
全く同じではないですが、ネット麻雀やネット将棋のレーティングをイメージすればわかりやすいかと思います。

主な変更点

大陸定数の廃止

大陸定数(D)については以前から批判があり、これが今回の一新の理由の一つとなっています。

これは大陸毎のレベル差をランキングに反映するために導入されましたが、例えば今回の日本のようにワールドカップで多少結果を残してもアジアで試合をしているうちにいくら勝ってもランキングが下がっていくという問題がありました。
元々対戦国間の強さ (C)係数もあるなかで大陸でも差を付けられたのでアジアの国にとっては不利なものでした。
従ってこの変更は今まで不利益を被っていたアジアやアフリカ、北中米にとってはプラスになります。

対象試合が48ヶ月→過去全ての国際Aマッチとなり、年平均の計算も行わなくなる

今までは試合から4年経つとそれ以前のポイントは失効しましたが、今回の変更により期間の区切りなくポイントが積み重なっていく形になります。
今までは試合が行われなくても時間が経つ度ポイント失効でランキングが変動したりその都度計算する必要がありましたが、新方式では加算式のため試合毎にポイントを足し引きするだけでいいので直感的に理解しやすくなります。

また、今までは1年ごとに各試合の平均を取ってポイントを算出していましたがこれもなくなります。
これの何が問題かというと、試合の重要度 (B)が原因で親善試合はポイントが低くなってしまうので、親善試合が多いほど平均も下がる可能性が高くなります。
例えばA国が年に大陸選手権予選のみ2試合、B国が大陸選手権2試合と親善試合2試合を行った場合、試合の重要度は平均すると前者は2.5、後者は2.33。試合結果が同じなら親善試合をしない方が得をします。
このルールの欠陥を突いて、これまでスイス、ポーランド、ルーマニア、ウェールズ等の国は意図的に親善試合を回避してランキングを高くしていました。
これからは平均を取ることなく加算していくだけなので、こういったルールの裏を突くやり方は難しくなります。

また、今までと比べると公式大会開催国は予選で得られないポイントで以前ほどは損をしなくなります。

試合の重要度の細分化

試合の重要度が細分化されています。
以前は4つにしか分かれていませんでしたが、今回より親善試合でもAマッチデーとそれ以外、公式大会でも準決勝以降とそれ以前では得られるポイントに差が付きます。
更にネーションズリーグが親善試合と他大会の間に新たに分類されています。これはUEFAが新設したUEFAネーションズリーグを念頭に置いていると思われます。
また、今後公式大会の決勝トーナメントでの敗北はポイントには入りません。
以前は最大でも4倍の差でしたが、これからはAマッチデー以外の親善試合とワールドカップ準決勝以降では実に12倍もの差が付くことになります。

お互いの相対的な強さを反映

試合の期待結果(D)
D=1 / (10(-E/600) + 1)
((-E/600)は指数)

にあたる部分で、お互いの実力差がポイントに反映されます。
今までもFIFAランクを元にした対戦国間の強さ (C)がありましたが、これは自分の強さに関係なく相手のランキングが高いほど貰えるポイントも増えるというだけでした。
新方式では自国と相手の強さの差が重要になります。
例として、2018年6月7日時点のポイントでドイツと日本が戦って、ドイツが勝った場合と日本が勝った場合それぞれの両国のポイントの変化を計算してみましょう。
ドイツと日本のポイントは下の通りです。

ドイツ 1558
日本 521

ドイツ勝利の場合

・ドイツのポイント
A=1558
B=6
C=1
D=0.982

1558+6*(1-0.982)=1559.108
変化+0.108

・日本のポイント
A=521
B=6
C=0
D=0.018

521+6*(0-0.018)=519.02
変化-0.108

日本勝利の場合
・ドイツのポイント
A=1558
B=6
C=0
D=0.982

1558+6*(0-0.982)=1552.108
変化-5.892

・日本のポイント
A=521
B=6
C=1
D=0.018

521+6*(1-0.018)=526.892
変化+5.892

ご覧の通り、ドイツが勝ってもドイツはほとんどポイントが増えず、逆に負けると大きく下がります。
逆に日本は勝てば大きくプラス、負けてもほとんどポイントは下がりません。
強い国は弱い相手に勝って当然だからあまりポイントが増えない、弱い国が勝ったら大金星だからたくさんポイントが貰えるというわけです。

強豪国に不利と思われるかもしれませんが、強い国ほど勝率は高いですし、上述の通り大会で勝ち進むほど重要度ポイントも大きくなり、また決勝トーナメントで負けてもマイナスにはならないのでバランスは取れています。

全体的には日本にとってはプラス

さて、気になる日本への影響ですが、概ね日本にとってはプラスになると言っていいでしょう。
まず大陸定数の廃止が大きい。これによってアジアというだけでポイントが減っていたのがなくなります。
既に書いた通り親善試合を回避してランキングを上げるのはこれから難しくなり、そういった国のランキングが下がれば相対的に日本が上がる可能性は増えます。
日本はこれまでワールドカップで6大会連続出場、うち3大会決勝トーナメント進出とそれなりの結果を出しているので、今の強さを維持すれば長期的には間違いなくランキングは上がっていくはずです。

ただアジアは大陸選手権の数が少なく、ネーションズリーグもないので試合の重要度という点では依然不利です。
なのでFIFAランキングの事を考えると、もしかすると将来アジアでもUEFAネーションズリーグのような大会が新設されるかもしれません。

まとめ

  • FIFAランキングの新方式はチェスなどで使われているイロレーティングを採用
  • 大陸定数が廃止
  • 期間の区切りと平均計算を廃止、単純な加算式
  • 親善試合を回避するなどルールの穴を突くのが難しくなる
  • 予選免除の大会開催国が以前ほどは損をしない
  • 試合の重要度が細分化
  • 弱小国が強豪国に勝つ見返りが大きくなる
  • 日本を含めたアジアの国にとってはプラスの変化

というわけでFIFAランキングの算出方式の変更についてまとめました。
イロレーティングは多くの分野で長年使われているだけあって、かなり公平になっていると思います。
というか改めて見ると以前の方式は結構欠陥が多いですね。
アジアの成績がワールドカップで奮わないのはFIFAランキングが低くポット分けで不利だったというのも一因なので、その点でも日本にとってはメリットの大きい変更です。
プレミアリーグのビザの要件になるなど重要性は上がるばかりなので、ランキングの信頼度が上がることは素直に歓迎したいです。

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