上がり続けるアメリカの自殺率 アメリカで何が起こっているのか

自殺率の国際比較や日本の自殺率の推移はちょくちょくチェックしているんですが、そういえば他国の自殺率の推移はあまり見ていなかったなと思い、英語で情報が入手しやすいアメリカの自殺率について調べてみました。
すると、アメリカの自殺率はここ20年ほど上昇を続けていることがわかりました。
この記事ではアメリカの自殺に関する現状とその増加の原因について書いていきます。

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上昇傾向にあるアメリカの自殺率

(American Foundation for Suicide Preventionより作成)

上の図はアメリカの自殺率です。
見て分かる通り、徐々にではありますが着実に自殺率が上がり続けています。
アメリカの自殺率は1999年から2014年までに24%上昇し、2016年には10万人あたり13.42人が自殺していることになります。


こちらは年齢別の自殺率推移です。
少し見づらいですが、15歳未満が概ね横ばいの他はほとんどの年齢で増加しています。
ここ数年は特に15~24歳の若者が大きく増えています。


更に多民族国家のアメリカらしく、人種別の統計もあります。
全ての人種で上昇していますが増加率が大きいのが白人とネイティブアメリカンで、特に白人はほとんど下がることもなく一貫して右肩上がりが続き、自殺率自体も最も高くなっています。

また自殺の手段に関するグラフもあります。
半分以上を銃火器が占めるというのもアメリカらしいですね。
もっとも、これでも銃を使った減少した方で、代わりに増えたのが首吊りなどの窒息死です。

増加の背景

このように多くの属性で自殺増加の傾向が見られるアメリカ。
その原因は一体なんなのでしょうか。

原因として経済的理由を挙げる研究者もいます。
過去の統計を見るとその時々の経済状況と自殺率に相関関係が見られるからです。
確かに、日本でも経済と自殺率は密接な関係があり、失われた20年の始まったバブル崩壊から90年代後半に急激な自殺率の上昇が起こりました。
しかし2003年にはピークを迎え、その後雇用情勢が改善されるにつれ自殺率もかなり下がりました。
アメリカも失業率は歴史的な低水準にあり、経済自体は日本より好調ですが自殺率は上がり続けています。
そう考えると単純に経済が原因とは言えないかもしれません。

ラトガース大学社会心理学教授のジュリー・フィリップス氏は社会の変化がリスクを高めている可能性があると指摘しています。
彼女は特に学歴の低いアメリカ人の間で結婚率が下がっており、社会的孤独の増加に繋がっていると言います。
実際、彼女は2005年に未婚の中年男性は既婚男性の3.5倍自殺のリスクがあるという計算を出しました。女性の場合は2.8倍になります。

(Pew Research Center『As U.S. marriage rate hovers at 50%, education gap in marital status widens』より)
既婚率が下がり、特に学歴が低いほど低下の幅が大きい。

経済が好調と言ってもそれは一様ではなく格差はむしろ大きくなっており、高等教育を受けていない人は仕事がないかあっても所得が低く結婚が難しい、そして孤独になり人生に絶望して自殺に至る、という説明は説得力があるように思います。

しかしこれだと10代の自殺率の急激な上昇は説明がつきません。
米国小児学会の研究では青少年のうつがここ11年でおよそ50%も増加しているそうです。
若者のメンタルヘルスの原因には複数の原因があり、SNS中毒やいじめ、経済的負担、家庭問題、暴力等がリスクになりうるとSuicide Awareness Voices of Educationの事務局長ダン・ライデンバーグ氏は話しています。

10代の若者も以前よりストレスが大きくなっているのは確かなようです。

まとめ

  • アメリカではほとんどの属性で自殺が増加しており、1999年から2014年まで24%の上昇が見られる。
  • 年齢では若者と中年、人種では白人とネイティブアメリカンに顕著な上昇が見られる。
  • 原因は色々考えられるが、中年の場合結婚率の低下が一つの要因として考えられ、特に学歴が低いほど深刻

銃乱射事件などが日本でも大きく取り上げられるアメリカですが、自殺においても問題が深刻化しているようです。
いわゆるプアホワイトとも呼ばれる人達の不満がトランプ大統領の誕生に繋がったと言われますが、そのことが自殺率からも見えてきます。

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