キングコング・西野亮廣の言うように「漫画村」対策は簡単なのか

ここ1年ほど、漫画の海賊サイト漫画村が大きな問題となっています。
『漫画家が宣伝してくれたおかげでユーザーが増えた』といった発言や、広告なしの有料バージョンを始めるなど挑発的な言動には驚くやら呆れるやらといったところですが、今のところ警察に摘発されるような兆候も見えません。
ついには国会で議論の対象になり、サイトブロッキングも含め対応を検討していくとのことです。
ただ現時点では法的な対処も簡単ではないということで、出版社や漫画家にとっては非常に頭の痛い問題です。
そんななかお笑い芸人の西野亮廣さんがこんなコメントをしています。

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「対策なんて、難しくも何ともない。耳を傾けてもらえば、半日で片付く話だ。ただし、聞く耳を持たない人は助けることはできない」

以前出版した絵本をネットで無料公開したところ逆に売上が増えたという経験から出版社側から全部無料公開すれば売上は増えるというものです。
西野さんの言うようにすれば漫画村対策になるのか、少し考えてみようと思います。

絵本と漫画の異なる事情

結論から言うと、個人的には抜本的な対策にはならないのではないかと思います。
その理由として、まず一つには絵本と漫画の性質の違いがあります。
西野さんの『えんとつ街のプペル』、ネットで無料公開されてる物を僕も読んでみました。
制作期間4年半というだけあってとてもきれいな絵だなと思いましたが、それだけに漫画で同じ効果を期待するのは難しいとも感じました。

絵本の場合無料公開されてる物と比べて、実物の絵本の方がサイズも大きく、絵も綺麗で装丁も異なります。
ですから低品質の無料公開版を見て気に入った人が高品質の実物の絵本を買うというのは頷ける話です。西野さんの場合芸能人ということもあって無料公開の際はメディアが大きく取り上げましたので、その宣伝効果もあったでしょう。

一方漫画の場合、単行本自体小説の文庫本程度のサイズですし、ページあたり制作期間の短さもあって基本的に色もなく絵の品質がネットに流れている物と単行本でさほど差がありません。
従って『えんとつ街のプペル』のように無料版を読んだからより高品質の有料版を買いたくなる、といったインセンティブは働きにくいと考えられます。

漫画業界でも既に無料公開は行われている

また、無料で低品質版を提供して売上を増やそうとするマーケティングの手法というのは特別新しいものではありません。
インターネットが登場する前にも、例えば化粧品のサンプルを無料で配るといったやり方も本質的には同じと言えますし、今ならYoutubeで音楽PVを公開するのも当てはまるでしょう。
漫画業界でも電子書籍が浸透してからはごく普通に行ってきています。
例えばKindleなどでは1巻だけ無料になっている作品も少なくないですし、アニメ放映に合わせて何巻か無料配信することもよくあります。
ワンピースが期間限定で全巻無料公開されたこともありました。またジャンプ+などネット限定の作品は最新話は無料なのが普通です。

最初の1巻をお試しで読んで貰う、アニメ化でより多くの人の目に触れるタイミングで
一時的に無料にして読んで貰う、ワンピースの場合連載が長期化して新規の読者が手を出しにくいので一時的に無料にしてハードルを下げる、といった狙いがあると思われます。
このように狙いを持ってやれば売上増につながることはあるでしょうが、単に常時無料公開するというだけでは必ずしも利益には結び付かないと思われます。
漫画村のような海賊版サイトの問題は出版社や作家の意図と関係なく勝手に公開されてしまい、著作権者側のマーケティングの障害となり尚且つその利益が一切権利者側に入らないことにあります。

以上のようなことを踏まえると、漫画村対策は西野さんが考えるほど単純ではないと言えます。

他にどんな対策があるか

では他に対策はどんなものが考えられるでしょうか。
法的に対処出来ればそれが業界としては一番助かるのは確かでしょう。
音楽業界では違法ダウンロードの厳罰化の影響で共有ソフトの利用者が減少したという見方もありますし、一定の効果はあるでしょう。
ただ、音楽業界はそれでも市場縮小に歯止めはかかっていないですし、漫画村のようなサイトはそもそもダウンロードではなく閲覧にあたります。
ダウンロードせずネット上で見るだけで違法とするのはさすがに難しいですし、現に音楽でもそれが違法にアップロードされたものでもダウンロードせず視聴するだけなら犯罪にはなりません。
それに漫画村はUIと作品の数の多さでユーザーを集めたというだけで、漫画村以前から海賊版サイトは他にもあります。
仮にブロッキング等の方法で漫画村を潰せたとしても、また類似のサイトが出てくてイタチごっこになってしまう可能性は否めません。
日本漫画家協会は読者に海賊版サイトの利用をやめるよう呼びかけていますが、ユーザーのモラルに訴えかけるやり方もあまり効果はないでしょうし、具体的な対策を持っていない状態で騒ぎ立てても漫画村側が挑発するようにかえって宣伝する結果に終わる可能性もあります。

他には、既に特装版や袋とじのような形がありますが、海賊版では得られない付加価値を単行本に付けていくというやり方も考えられます。
しかしその分コストもかかりますし、そういうのがいらない人や電子書籍には使いにくいという問題もあります。

一番いいのは合法的な形で画期的なサービスが生まれることです。
漫画業界でも出版社独自、あるいは非出版社系の漫画アプリ、電子書籍、ネット配信の作品など各社が色々試行錯誤しているのは窺えますが、映像におけるNetflix、スポーツにおけるDAZNのような革新的なサービスはまだ出てきていない印象です。
言うほど簡単に出来ることではないでしょうが、今海賊版を利用しているユーザーでもお金を払いたいと思うような、利用価値の高いシステムが生まれることを期待したいですね。

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