人手不足なのに賃金が上がらない理由

景気の回復に伴い人手不足の傾向が年々強まり、求人倍率の上昇、売り手市場といった言葉がニュースで頻繁に聞かれます。
一方で、景気が回復し人手不足なのに賃金が上がらず、消費もいまいちで国民は好景気を実感できないということも毎回のようにニュースで言われています。
企業業績は伸び続け、株価も上がり続け、GDP成長率その他の指標を見ても景気が回復しているというのは間違っていません。
にも関わらずどうして賃金が上がらないのか?原因を探ってみます。

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パートタイム労働者の賃金は上がっている

 

(厚生労働省 「毎月勤労統計調査 平成29年分結果確報」)

これは厚生労働省の毎月勤労統計調査からの引用です。
確かに賃金は一般労働者(正社員)、パートタイムともにあまり上がっていないように見えます。
物価変動を加味した実質賃金では一般労働者はマイナスになっています。
しかし、全体的に0パーセント台の低い伸びの中パートタイム労働者の時間あたり給与、つまり時給は2.4%と高い伸びを示しており、
一方で所定外給与、特別に支払われた給与は大きく減っています。

つまり、賃金が伸びていないと言っても正社員とパートタイムではその理由が異なり、正社員は単純に賃金があまり上がっていないのに対し、パートタイム労働者は時給はかなり伸びているけれども働く時間を減らしているため給与総額ではあまり増えていないということになります。

これは今年だけでなく長期的なトレンドで、しかも平成22年以降パートタイムの時給伸び率は年々上がっています。
それと並行してパートタイム労働者は毎年勤務時間を減らしています。

(厚生労働省 「毎月勤労統計調査 平成29年分結果確報」)

少なくともパートタイムに関しては人手不足に応じてちゃんと賃金は上がっており、そう見えないのはそれに合わせて働く時間を減らしているからということになります。
なぜ勤務時間を減らすのかですが、必要な金額だけ稼いで無理をしない、あるいは稼ぎすぎると税額控除を受けられなくなる所謂「103万円の壁」を超えないようにセーブしている、などの理由が考えられます。

一般労働者でも賃金上昇にばらつき、大企業が伸び悩む

ここまででパートタイムに関してはきちんと人手不足を反映して賃金が上がっていることが分かりました。
確かに、最近は都内のアルバイト募集だと時給が1,000円を超えない方が珍しいくらいですからね。

では何故パートタイムは賃金が上がっているのに正社員の給料はあまり上がらないのでしょうか。

(経済産業省 「平成29年度賃金引き上げの傾向」)

一般労働者の賃上げ率を企業規模別で見てみると、大企業の賃上げペースが鈍いのに対し中小企業が賃上げ率を伸ばし、大企業との差がほとんどなくなっています。

2016年の上昇率だと500人以上の大企業が0.6%に対し100人未満の中小企業が0.9%。
特に社員5~29の零細企業での上昇が大きくなっています。

中小の賃金上昇率、16年は大企業上回る 人手不足で(日経新聞)

一般に大企業の方が業績が良く、資金にも余裕があるはずなのに何故大きい企業ほど賃上げが鈍いのでしょう。
一つには大企業はまだそこまで人手不足ではないからと言えます。

景気がいいのもあって大企業での就職を望む求職者が増えます。
中小企業の社員はよりよい条件で転職をし、中小企業は人材を引き留めるためにそれほど余裕がなくても賃金を上げざるを得ないというわけです。

さらに、大企業の雇用慣行の問題もあります。
規模の大きい企業ほど終身雇用の度合いが強いことはイメージ出来るかと思います。
終身雇用型の企業では景気が良くなっても、新たに人を増やすより残業を増やして対応する傾向にあると言われています。
一度正社員を増やすと解雇するのが困難なので、可能な限り今いる人員で対応するためです。
また、新卒で入って生え抜きのまま働き続けるのが出世や待遇の面でも有利なので離職率も低くなります。

このように終身雇用的な企業の人事は硬直的になり人材獲得競争が起こりにくいので、企業としては賃金を上げる必要性があまりありません。

また、大企業では一度賃金を上げると景気が悪くなっても解雇も難しく、賃金も容易には下げられないため将来に渡って大きな負担となります。
これが例えばアルバイトなら元々それほど長期で働く人はいませんし、景気が悪化しても人手を減らすのは容易なので賃上げをそれほど躊躇う必要もありません。
政府の賃上げ要請に積極的な企業でも永続的に影響が及ぶベースアップを嫌い、景気が悪化すれば減らすことが出来る一時金(ボーナス)で賃上げ率3%を達成しようとしているのはそのためです。

まとめ

  • パートタイム労働者の時給は人手不足を反映して上昇している
  • パートタイム労働者は時給が上がった分働く時間を減らしている
  • 正社員でも中小企業の伸び率が大企業を上回っている
  • 大企業で賃金が伸び悩んでいるのは、まだそこまで人手不足でないことと、大企業ほど終身雇用的の度合いが強いことが原因だと考えられる

賃金が上がらないと言われますが実際はパートタイムの時給は伸びており、正社員でも中小企業は人手不足を反映して賃金が上がりつつあり伸び悩んでいるのは実は大企業の正社員だということがわかりました。
一応大企業でも人手不足の度合いは年々高まっているので、このまま行けば大企業の正社員も賃金が上がるかもしれません。
しかしいつまでも景気の拡大が続く保証はありませんし、賃金だけでなく長時間労働の改善や女性の社会進出が進まない原因となっている終身雇用の見直しが必要だと言えます。

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