『反逆の星』(オースン・スコット・カード)

流刑惑星トリーズンで不死身として恐れられ、近隣各国をつぎつぎと征服しているミューラー人――。遺伝子学者の末裔であるかれらは遺伝子操作で驚異的な再生能力を得ていたのだ。だが、その能力に異常をきたしたミューラー国の王子ラニックの胸が、ふくらみはじめてしまった。国を継げない身となった王子は、やむなく諸国遍歴の旅にでるが……。3千年前に流刑にされた科学者たちの子孫が住む惑星を舞台に描く傑作冒険SF。

『エンダーのゲーム』などで有名なオースン・スコット・カードの長編SFの2作目。
もっとも今回読んだのは後に出た改訂版で、プロットはそのままに語り口を修正したものです。

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内容

物語の舞台はトリーズンという惑星。
(このトリーズン(treason)というのはそのまま反逆という意味で、原題もtreasonとなっています。そのままだと伝わらないので邦題ではわかりやすく『反逆の星』というタイトルになっています。)
かつて共和国に反逆を起こした罪人達が追放された星で、その子孫達は三千年が経ってからもいまだにトリーズンに閉じ込められています。
追放された人々はそれぞれの専門分野があり、それに応じて子孫達は一族を作り分かれて生活しています。
トリーズンは資源の不足した星で、鉄を入手する方法は「アンバサダー」と呼ばれる交換装置のみ。
アンバサダーに共和国の人間にとって有益な物を入れると、代わりに鉄が返ってくるという仕組みです。
各部族はアンバサダーによって手に入れた鉄を武器に加工して覇権を争い、いつか鉄を独占して宇宙船を作りトリーズンからの脱出を夢見ています。

この物語の主人公はそんな部族の一つ、ミューラー一族の王子ラニック・ミューラーです。
ミューラー人は皆再生能力を備えており、手足を切り落とされてもトカゲのしっぽのように再生してきます。
その特性もあってミューラーは勢力の強い王国を作り他の部族を侵略していました。
知性も高く将来王の座を継ぐことを期待されたラニックでしたが、気付くと胸が大きくなってきました。
もちろんラニックは女ではないのですが、過剰再生症といってミューラー人の再生能力が暴走してしまう病気になってしまったのです。
この病気が発症すると問題が無い器官を生産し、最終的に手や足が何本も生えてきて怪物のような見た目になってしまい人間としての知性も失うことになります。
ミューラーでは過剰再生症が発症するともはや人間としては扱われず、家畜同然に飼われ余分な器官を切り落としてアンバサダーで鉄と交換するだけです。
従ってラニックは王位継承者としての地位を失い、追放同然に大使としてンクマイという王国へ遣わされることになります。
大使といっても正式なものではなく、ンクマイが何と交換に鉄を入手しているか調べるスパイとしての仕事です。

こうしてンクマイに旅立ったラニックでしたが、その旅は予想もしなかった壮大な結末へとつながっていきます。
ミューラーというかなり封建的な国の王子ということもあって物語当初はかなり傲慢な性格のラニックでしたが、長い旅に出て他の部族と関わり、トリーズンの真実を知る中で大きく変わっていき、やがてはトリーズンそのものの運命を大きく変えることになります。

感想

ジャンルとしてはSF小説ですが、科学的要素とか未来感はあまりないのでファンタジー冒険小説といっても通るかもしれません。
王子たるラニックが突然の不幸によって地位を追われ、他郷を旅する中で成長し世界を変えるまでに至るという貴種流離譚的王道物語で、終盤には思わぬ展開もありエンタテインメントとしてよく出来ていると思います。
海外小説というと翻訳独特の硬さもあって読みづらいこともありますが、本作は昔の小説の割にすんなり読めました。

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