外国人技能実習生失踪者増の理由と今後実習制度はどうなるべきか

日本で技術を学び祖国で役立てるいわゆる外国人技能実習生の失踪者数が急増しているというニュースが報道されています。
失踪者数は上半期だけで3,000人を超えており、このままいくと過去最高の6,000人台になると見られています。
なぜこのようなことが起こっているのかを探り、今後日本はどうすべきか考えたいと思います。

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技能実習生とは

そもそも技能実習生とはなんなのか。
技能実習制度を取り仕切る財団法人JITCOのホームページには、

外国人技能実習制度は、1960年代後半頃から海外の現地法人などの社員教育として行われていた研修制度が評価され、これを原型として1993年に制度化されたものです。

技能実習制度の目的・趣旨は、我が国で培われた技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進です。
制度の目的・趣旨は1993年に技能実習制度が創設されて以来終始一貫している考え方であり、技能実習法には、基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と記されています。

技能実習制度の内容は、外国人の技能実習生が、日本において企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、出身国において修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図るものです。期間は最長5年とされ、技能等の修得は、技能実習計画に基づいて行われます。

と書かれています。
要するに国際協力、支援の一環として開発途上国の人を受け入れ、日本で技能を獲得しそれを母国で活かしてもらうための制度ということです。
しかし周知の通りそれは建前に過ぎず、労働者も受け入れ企業側も単なる出稼ぎ労働として利用しているというのが実態です。現状は「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)この文言に思い切り反しているように見えますが大丈夫なんですかね。
全てがそうではないにせよ単純作業で数ヶ月もすれば学ぶこともなくなり、また環境の違いから母国に帰っても活かす機会がないということも珍しくありません。
またその待遇の悪さから国内外で批判されており、監督指導を実施した実習実施機関の実に70%が労働基準関係法令に違反しています。違反事項としては①労働時間(23.8%)、②安全基準(19.3%)、③割増賃金の支払(13.6%)の順に多くなっています。

企業側がこの制度を利用する理由としては単に賃金が安くても人が集まるというだけではありません。実際、実習生制度では仲介料を払う必要があるため日本人を雇うより高くつく場合もあるようです。それでもこの制度を利用する企業が絶えないのは辞められるリスクがないからです。
普通なら職業選択の自由が保障されていますので待遇に不満があれば職を変えればいいわけですが、この制度の場合建前上労働ではないため普通の労働者のように不満があるかた辞めて転職するといったことができません。
そういった理由で日本人に不人気な業種で特に需要が高くなっており、実習生の数も増加し続けています。

(法務省データより作成)

失踪者増加の背景

労働環境の悪さや途中で辞められないという事情と年々実習生全体の数が増えているのもあって、上のグラフのように失踪者の数も右肩上がりで増えています。
去年は減少したものの今年は再び増加に転じて、前述の通りこのままいくと過去最高の6,000人を突破する見込みです。
これに対し法務省幹部は「原因が分からず分析が必要」と話しており、ネットユーザーの一部からは「待遇が悪いからだろ」「なんでわからないんだ」といったツッコミが入っています。
ただこれはツッコミの方が少し的外れで、法務省幹部の感想も仕方ない面があります。
というのも、2015年に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」が閣議決定され、新たに監視機関を設置し、報酬を「日本人と同等以上」にすることを義務付けるなど、実習生の待遇改善を図っているからです。
どうせアリバイでやってるだけでそんなの意味ないと思う方もいるかもしれませんが、依然として多いものの法令違反の機関の割合は徐々に下がっていますし、いまだ不十分とはいえ以前と比べれば待遇が改善されてきているのは確かなようです。
その甲斐あって2016年は失踪者の数が減少した所で再び増加したので、同法務省幹部もすぐには原因が分からず遺憾だと述べたのでしょう。

待遇は以前よりはマシにになっているのになぜ再び失踪者が増加しているのか。
色々要因はあるでしょうが、個人的な想像では昨今の人手不足が関係あるのではないかと考えています。
元々この実習制度自体人手不足の企業のために行われているわけですが、求人倍率が過去最高レベルになっているように実習制度を利用していない業界でも人手不足は深刻化しています。
そういう企業からすればまさに猫の手も借りたいといった所で、たとえ違法就労になっても雇いたいという企業も増えているはずです。そして実習生からすれば以前よりはよくなっていると言っても実習生の賃金が低いことには変わりなく、違法就労でも給料が上がるならその方がいいという
ことで失踪する外国人が増えているのではないでしょうか。
実習生は同郷同士で横の繋がりを持っており、ビザなしでも働ける職場等の情報を共有しているのではないかと思います。

もう一つには保証金の廃止の影響もあるのではないかと言われています。
保証金というのは実習生がお金を預け実習期間が終わるとお金が返ってくる、逆に言うと実習先から失踪すれば没収されてしまうお金です。
元々日本政府は禁止していたのですが、それでも2015年には実習生の1割以上が保証金を支払っていました。それに対する監視が厳しくなって保証金の縛りがなくなり、失踪しやすくなったという見方があります。

これから日本はどうするべきか

このような状況に対し日本はどうすべきでしょうか。
まず移民、というか外国人の単純労働者を受け入れるかどうかという問題があるわけですが、どちらにしてもこの制度は廃止すべきだと僕は思います。
僕自身移民や単純労働者の受け入れについて必ずしも肯定的ではありませんが、今のどっちつかずのやり方よりは正当に労働者として受け入れた方がずっとマシだと考えます。

実質的には労働者としての需要しかないのに実習生という建前で増やし続けるという時点で歪んでいますし、その歪みの結果が過酷な待遇であったり失踪者の増加につながっています。
そして実習生は失踪した瞬間不法滞在になり、他で働き始めれば不法就労ということになります。それならまだいい方でいい仕事が見つからず窃盗などの犯罪に手を出すケースも珍しくありません。失踪までいかずとも実習生となった外国人は対日感情を著しく悪化させているというデータもあり、国内のみならず国外からも強い批判を受けています。
つまりこの制度は移民肯定派、否定派、外国人の誰も得をしておらず、悪徳企業やブローカー、天下り団体等一部の組織のために多くの人の利益が犠牲になっているのが現状です。

元はと言えば単純労働者を望まない国民と外国人労働者の望む企業、両方に政府がいい顔をしようとした結果がこの状況につながっています。
受け入れ機関への監視を強化したり何もしていないわけではないのはわかりますが、「外国人単純労働者はいない」という建前で実際には受け入れを増やし続け対症療法的な対策で乗り切るのはもう限界に近く、失踪者の増加はその証拠と言えるでしょう。
「単純労働の外国人は日本に入れない」と国民に約束したのであれば入れるべきではないですし、日本にとって外国人労働者の受け入れは必要だというのであればこのようなやり方でごまかすのではなくきちんと国民に説明し理解を得るべきです。
介護業界が実習生の受け入れに加わり更にコンビニ業界も国に申請していますが、野放図に受け入れ数を増やす前に制度そのもののあり方にきちんとメスを入れて欲しいと一有権者として切に望みます。

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