世界の最先端を行くICT先進国エストニアの解説書『未来型国家エストニアの挑戦  電子政府がひらく世界』(ラウル・アリキヴィ、前田陽二)

世界的にもICT(情報通信技術)化が進んでいるエストニアについての一冊。
「電子政府エストニア」という言葉は何度か耳にしてはいたものの、それが具体的にどのようなものなのかは知らなかったので本書を購入しました。
どのようにしてエストニアが電子国家へと至ったのか、エストニアにおいてICTがどのように機能しているのか中々詳細に書かれています。

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エストニアの歴史

エストニアはヨーロッパ北部に位置し、西にバルト海を臨むことからラトビア、リトアニアとあわせてバルト三国と呼ばれています。
紀元前8千年前頃に先住民が定住し、スウェーデンやロシア、ソ連の支配下に置かれながら独立を回復し現在のエストニアが成立したのは1991年のこと。
エストニアは独立自体は1918年で1991年はあくまで回復の年としていますが、実質的には国が出来てから30年も経っていないということになります。
1996年~2000年にかけて、独立間もなくインフラ整備やリソースが十分でないなか、シンガポールのように先進国をひと跳びで追い越すことを目標にタイガーリープ(虎のひと跳び)プロジェクトが策定、インターネットの普及を最優先で行いました。
それ以来全学校でのインターネット環境を整備、eIDカードの配布、Wi-Fi無料化、インターネット投票等次々にICT化を進めていき電子政府と呼ばれる現在に至ります。

電子政府とは

エストニアの電子サービスの中心にあるのがeIDカードという個人認証カードです。
市民一人一人に配布され所持が義務付けられています。
一人一人に国民番号が割り振られており、電子認証と電子署名用のICチップが内蔵されています。
各ICT基盤が共通しているためこれ一枚でエストニア市民はあらゆる行政サービスにアクセスすることが出来、民間での取引にも効力を発揮します。

  • 選挙の投票
  • 住所の変更届
  • 会社登記
  • 土地登記
  • 医療サービス
  • 教育システム

等々多くの分野で電子化が進み、ユーザーの利便性が高まるだけでなく行政コストの大幅な削減が可能となっています。
エストニアでは会議でも紙の資料が使われることはほとんどないそうです。
起業支援も充実しているためエストニアでは多くのICT企業が立ち上げられており、あのskypeもエストニアで生まれました。

現在エストニア政府は2020年に向けて更なる電子化計画を進めています。

感想

以上が大雑把な抜粋ですが、本の中ではより詳しくエストニアのシステムや日本政府への提言なども書かれています。
本書を読んで思ったのは必要は発明の母というか、独立間もなく出来る事の限られるエストニアだからこそこれだけのICT化を進められたのかなと感じました。
中国で電子マネーが普及している要因には紙幣の信頼性が低いというのもあるとも聞きます。
筆者は人口の多寡は言い訳にならないと書いていますが、人口100万程度でゼロからシステムを作れたエストニアと比べ人口1億以上え既に行政システムが出来上がってしまっている日本で時間が掛かるのはある程度は致し方ないと思います。
とはいえ、生産性の向上、財政赤字、高齢化と様々な問題を抱える日本にとってもICT化は必要なことです。
そのためにはまず我々国民がICT化について理解を深めるべきですし、本書はそれに役立つことでしょう。

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