警察小説の名手が描く熟練検視官の生き様『臨場』(横山秀夫)

「どこにでもあるクソ人生でも、ホトケにとっちゃ、たった一度の人生だったって
ことだ。手を抜くんじゃねえ。検視で拾えるものは根こそぎ拾ってやれ」

臨場とは、警察組織では、事件現場に臨み、初動捜査に当たることをいう。
その初動捜査の要である検視官・倉石が求めるのは、
検視から得られる事実だけではなかった。
動機、犯行の引き金、被害者の人生--。

組織のなかで揺れ動く個人の思いやしがらみ、事件の裏に隠された人の情。
横山秀夫の独壇場!

 

警察小説の名手、横山秀夫の短編集。朝日テレビでドラマ化、映画化もされています。
「臨場」とは事件現場に赴き初動捜査を行うことを指します。
メインとなる登場人物は「終身検視官」の異名を持つ倉石義男。
といっても各編とも主人公は倉石ではなく、記者や刑事等他者の目を通してその人物や事件が映し出されていきます。
検視官というのは変死体の検視を行う警察官のことで、彼らの判断で司法解剖の実施や自殺か他殺か、事故死か決まったりするので非常に重要な役割です。
単に主人公である倉石が鮮やかに事件を解決していく、というのではなく一つ一つの事件に死者やその周囲の人物それぞれのドラマが物語に深みを与えています。

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物語の設定や展開もいいんですが、中心人物である倉石を始め人間の描き方がいいですね。リアリティがあって登場人物に共感することで物語に引き込まれます。

長編小説のように話に大きな動きやあっと言わせるような大どんでん返しがあるわけではないですが、各話とも丁寧に書かれていて読み応えがあります。

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