観光客増の光と影 観光の「質」を高める政策を

2016年の訪日外国人旅行者数は過去最高の2403万9千人となり、政府目標である「年間2000万の訪日外国人旅行者」を達成、今度は「訪日外国人旅行者数年間4000万人」を目標に掲げています。
政府は日本を観光立国にすることを目指すとしており、観光客の増加を経済成長に結びつけたい考えです。
今後も訪日外国人観光客は増加すると思われますが、観光客が増えることはいいことばかりではありません。
観光客を巡る世界の現状と日本の今後についてまとめてみます。

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年々増加する外国人旅行者数

(国土交通省 『訪日外国人旅行者数の推移』)

こちらは国土交通省の資料ですが、見ての通り僅かな例外を除いて右肩上がりで訪日外国人観光客の数は増え続けています。

それに合わせて日本人が海外で使ったお金と外国人が日本で使ったお金を合わせた国際旅行収支は2015年に53年ぶりに黒字(1兆1,217億円)となりました。

最近では中国人観光客の「爆買い」が話題になりました。

経済が潤って結構なことだと思いますが、世の中いいことばかりではありません。経済的利益と観光客が増えすぎたことによる弊害のジレンマに陥っている他国の事例を見てみましょう。

悲鳴を上げる観光立国

アイスランド

アイスランドでは、人口33万の国に年間およそ220万人もの観光客が訪れています。
アイスランドは世界的金融危機の影響で実質的な財政破綻に陥りましたが、観光業はそのアイスランドが危機を脱する上で大きな助けとなりました。
しかし一方で観光客による混雑や住宅価格の上昇などの弊害も起こり、Airbnbで観光客に貸し出すからとアパートを出る羽目になった人もいるそうです。
最近になって政府は年間90日以上部屋を貸し出している人に対し公的登録を求めています。
また道や橋、駐車場のキャパシティを上げ、マナーの悪い観光客への苦情に応えトイレやゴミ箱を増設しています。

アイスランド救った観光、今は頭痛の種にも(ウォールストリートジャーナル)

バルセロナ

バルセロナには同市人口160万人に対し年間3200万人の観光客が訪れています。
市民に「困っている問題」を尋ねたところ、失業に次ぐ2位が観光客の多さという答え。
それにより民泊による騒音、賃貸料の上昇といった問題が起こっており、バルセロナ市は
観光に対する規制に踏切っており賛否を呼んでいます。

バルセロナが「観光客削減」に踏み切る事情(東洋経済オンライン)

イタリア

イタリアでも事情は同じで、訪伊観光客は2016年で5200万人を突破し、2000年に比べ30%近くも増えました。
観光が貴重な収入源となっているものの、騒音や混雑による弊害が問題になっているのは他と同じです。
特にイタリア人は景観を重視する傾向が強く各地で観光客に対する規制が強まっています。

イタリア観光地が悲鳴、客殺到に「もう十分」(ウォールストリートジャーナル)

 

日本でもひずみが

日本は上記のような国・地域と比べればまだそこまで観光客が多いわけではありませんが、訪日観光客が増えるにつれ徐々に弊害も出てきています。
保険に加入せず来日し、日本で事故や病気になって病院に行った結果莫大な治療費を払いきれなくなるといったケースが増えているそうです。
また、民泊では周辺住民とのトラブルも起こりやすく、先日は日本人の民泊経営者が韓国人旅行者に暴行を働くといった事件もありました。

これらは当事者の意識やモラルの問題もありますが、制度やシステムが十分に整備されていない所にも原因があります。

このまま単に数を増やしていくだけではなく、国、地域住民、訪日外国人それぞれにプラスとなるようなシステムの整備が求められます。

まとめ

人気観光地では観光客が増えることで消費が増える一方、コストやトラブルも増大しています。
このまま観光客を増やしていくのであれば日本もそうなることは間違いないですし、既にその兆しも出ています。
せっかく観光客が日本に来て消費をしても目に見えない物も含めて利益よりコストの方が上回っては何にもなりません。
これからは単に観光客の数を増やせばいいというのではなく、一人当たりの支出をいかに増やすか、コストやトラブルをいかに最小限にするかといった質の面での観光政策がより重要になってくるでしょう。

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