不正研究を暴く異色の公務員ミステリ 『水鏡推理』(松岡圭祐)

2017年6月15日

今日は小説の紹介です。
『催眠』や『千里眼』、『万能鑑定士Q』、『探偵の探偵』など多くの作品が実写化された松岡圭祐氏の新シリーズ(既刊6巻)です。
松岡佳祐氏の作品は結構読んでますが、今回も松岡作品の魅力が十分に発揮されています。

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内容

正義感を発揮するあまり組織の枠をはみ出してしまう文科省ヒラ一般職事務官・水鏡瑞希。役所は彼女をもてあまし、研究費の不正使用を調査する特別チームに配属する。
税金目当てに悪事がうごめく臭いに敏感に気付く瑞希。彼女は果たしてエセ研究開発のねつ造を見破れるか?

(公式より内容紹介)

松岡氏の過去の作品と同様、今回も女性主人公が様々な事件を解決していきます。
今回の舞台は霞ヶ関。文部科学省に勤める国家公務員、水鏡瑞希が主人公ですが、国家公務員といっても所謂官僚にあたる総合職ではなく主に事務作業を行う一般職。刑事ドラマで言うところのノンキャリア組に近いイメージでしょうか。
それもそのはず、彼女は偏差値33の無名大学出身で、お世辞にもエリートとは言えません。

それでもある想いを持って文部科学省に入省するわけですが、そんな彼女が作中で新たに配属されたのは「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」。
これは研究における不正事案が後を絶たない状況にあるとして2013年に作られた現実の組織です。
研究における不正と言えば小保方晴子氏のSTAP騒動が記憶に新しいですね。
このタスクフォース自体はSTAP騒動以前に出来たものですが、この『水鏡推理』はSTAP騒動の影響を受けて書かれたものと思います。
そのタスクフォースで、総合職と一般職の身分の差や縦割り行政、役所特有の融通のきかなさ等様々な障害にぶつかりながら、学生時代に探偵事務所でのアルバイト経験と持ち前の正義感で水鏡瑞貴が科学研究にまつわる不正を暴いていく、というのがシリーズに共通したストーリーです。

以下この作品の見どころ、魅力を伝えていきたいと思います。

発送の斬新さ

当時まだあまり馴染みのなかった催眠術を扱った『催眠』や、「人の死なないミステリ」のはしりである『万能鑑定士Q』、ホームズのような古典的な探偵像と異なる現実的な探偵の世界を描き探偵業界の問題を扱った『探偵の探偵』等々、今までにない新しい切り口の作品を描いてきた松岡氏ですがその特徴は本作にも共通しています。
人の死なないミステリという点では『万能鑑定士Q』と同じですが、今回は霞ヶ関、科学研究の不正を一般職の女性が暴いていくというこれまた斬新な探偵像が描かれています。

推理小説の肝である謎とトリックにもそれが遺憾なく発揮されており、悪意を持った研究者が不可解な謎を瑞希に突きつけてきます。

豊富な雑学

松岡作品の特徴としてどこで仕入れているのかというくらい広範に渡る雑学がありますが、今回は舞台設定もあって省庁や科学技術、社会問題に関する知識が豊富に取り入れられおり雑学本を読むような面白さもあります。
専門用語もたくさん出てきますが、主人公である瑞希が科学にあまり詳しくないこともあってちゃんと説明がされるので読者が置いてきぼりになることはありません。
また実際に霞ヶ関の関係者に取材しているだけあって省庁の描写もリアリティがあります。(現実の省庁の内部を見たわけではないので実際にどこまでリアルなのかはわかりませんが。)

 

魅力ある主人公

そしてなんと言っても小説で重要なのは主人公ですね。
上でも書いたように瑞希は決してエリートではなく末席の事務官ですが、世の中のために不正を暴こうという正義感は組織の誰よりも強いものがあります。
不正や汚職等明らかな問題があるにも関わらず現実は中々変わらない。政治や金にまつわるそんな状況をニュース等で触れてうんざりしたことは誰しもあるのではないでしょうか。
しかしこの小説の主人公である水鏡瑞希は決して妥協しません。
立場の差、霞ヶ関特有のお役所体質、自分の力不足、そういった壁にぶつかり心が折れそうになりながらも巧妙な不正を白日の下に晒し、悪党を懲らしめる瑞希の活躍に読者は胸がすく思いがすることでしょう。

 

読みやすい作品なので松岡圭祐作品が好きな方はもちろんそうでない方にもおすすめの一冊です。

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